30by30自然共生の森づくりプロジェクト

公益財団法人森林文化協会

国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」加速する生き物の絶滅 健全な生態系を守る取り組み

30by30とは

◆「30by30」は、2030年までに陸と海のそれぞれ30%以上の面積を健全な生態系として保全しようという目標です。生物多様性の損失が世界的に進むなか、22年に開催された生物多様性条約第15回締結国会議(COP15)で採択されました。その国内政策として、環境省は23年度から「自然共生サイト」の認定をスタートさせました。24年度前期の認定までで計253カ所が認定(決定含む)されています。

◆国内では20年までに、陸域の20.5%、海域の13.3%が自然公園や鳥獣保護区などの保護地域に指定されています。さらなる生物多様性の保全を進めるには、保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域(OECM)での取り組みが重要だと言われています。これを踏まえ、自然共生サイトは里地里山、企業の森、都市の緑地、沿岸や海など民間などの取り組みによって生物多様性の保全がなされている区域が対象です。

◆さらに、自然共生サイトを法制化する形で生物多様性増進活動促進法が24年4月に公布、25年4月に施行される予定です。現在の自然共生サイトを踏襲する「すでに生物多様性が豊かな場所を維持する活動」に加えて、管理放棄地などでの「生物多様性を回復する活動」、開発跡地などで「生物多様性を創出する活動」が新たに対象となり、活動内容を認定する仕組みになる見通しです。
30年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる国際目標「ネイチャーポジティブ」に向けて、より幅広いフィールドで生物多様性を豊かにする活動が重要となっています。

◆ こうしたなか、国土の7割を森が占める森林大国・日本では、里地里山での森林環境の保全をいかに進めるかが「30by30」の達成に向けて大きな意味を持ちます。林業の衰退や生活様式の変化などによって、森林と人とのつながりが希薄になった今日、身近にありながら人の手が入らなくなり、荒れ果てた森林が増えています。私たちの生活基盤となっている自然の恵みを維持・向上させるため、力を合わせ、より多くの森林を適切に整備してくことが重要です。

ヒノキ林と雑木林が広がる「つくば万博の森」=茨城県つくば市

森林文化協会の取り組み

当協会が維持管理しているつくば万博の森(茨城県つくば市、9・87ヘクタール)は、2024年度前期に「自然共生サイト」に認定されました。自然共生サイトは里山として豊かな生態系が保全され、多くの動植物種が生息している区域を国が認定する制度です。
つくば万博の森は筑波山の南に位置する宝篋山(461m)の中腹に広がる国有林です。林野庁関東森林管理局と森林文化協会が分収造林契約を結んでおり、遊歩道(約0.25ha)はつくば市が管理しています。
1985年の「つくば万博」開催を機に、当協会と朝日新聞社がマツクイムシ被害からの森林再生を掲げ、全国約4万2千人から集めた募金をもとに、ヒノキなど約3万本を植林。宝篋山に多く自生するヤマザクラなども植樹しました。
以来39年にわたり、当協会が定期的な間伐などの育林や、草刈りなどの維持管理作業を行っています。
生物多様性の保全は気候変動対策と並んで社会の重要テーマとなっています。当協会は「ネイチャーポジティブ」や「30by30」の理念に賛同し、この森林で専門家の協力・助言をいただきながら生態系調査を実施。その結果をもとに、自然共生サイトの認定を申請しました。
専門家による環境省の委員会で、里山に特徴的な生態系や、希少な動植物が生息する場として、自然共生サイトに認定されることになりました。
今後も生物多様性が豊かな森林を保全していくため、維持管理やモニタリングを続けてまいります。


朝日新聞・2024年10月9日付茨城版

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朝日新聞デジタルでは、「30by30 生態系を守る」という連載記事を配信しています。生物多様性やサステナビリティー経営、野生動物の保護や管理など、幅広いテーマを取材、記事を掲載しています。

https://www.asahi.com/rensai/list.html